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ゴールデンウィークも終わりに近づいたある日。
「何ーッッ、朱天を招待するゥ!?」
のどかな休日におよそそぐわない秀の絶叫が轟いた。普段ならすかさず伸か征士の愛の鞭が飛ぶところだが、今回は場所が秀の店、さらに準備中でほかの客がいないことも幸いして、大目に見てもらえたようだ。何よりその驚きは誰もが妥当だと認めざるをえなかった。
「ああ。・・・まずいかな、やっぱり?」
遼は何の底意もない真顔で一同を見回した。
「まずいも何も・・・本気だったんだ・・・」(注:『A Hearty Happy Mother's Day』参照)
伸が口を半開きにしたまま絶句する。
「ほかの連中は呼ばないのか? 一人だけでは角が立つだろう」
征士はしばらく考えた末、冠婚葬祭を取り仕切る舅のようなコメントをした。
「あいつらはそんなこと気にしないさ。それよりどうやって向こうと連絡を取るつもりだ?」
当麻は3杯目のチャーハンのおかわりをよそいながら、最も根本的な問題を指摘した。
「手紙を書いて白炎に届けてもらう。あいつ黒炎王に命をもらってから、妖邪界に飛べるようになったらしくて」
「なるほど。元々霊獣みたいなものだし、その程度はできても不思議じゃないか」
説明に納得し、そのまま話が終わりそうになった時、
「って、問題はそこじゃねェだろ!!」
再び秀の雄叫びが炸裂した。
「じゃあどこなんだい?」
伸が半ば投げやりにツッコミを返す。
「どこって・・・、どこだ?」
叫んではみたものの、当の本人も不都合を具体的に言葉にできず、質問は隣の征士に押し付けられた。伸は一瞬頬を引きつらせるが、それは気の回しすぎだったようで、征士は表向きは淡々と続きを受けた。
「妖邪界はまだ不安定な状況だ。誕生会ごときで重要な役目にある者を呼びつけるのは不謹慎だし、ナスティも却って困るのではないか」
「そう! オレが言いたいのもそこだよ」
秀が拍手せんばかりに同意を表す。
「でも半日くらいなら大丈夫だろう? 悪奴弥守や迦遊羅はよく遊びに来てるじゃないか」
遼の発想は楽観的で多分に希望を含んでいたが、それだけに妙な勢いがあった。が、
「あれは一応仕事のついでだ。遊ぶことが本当の目的ではない」
「それに朱天はあいつらほど物分りがよくないからなー。説教喰らうのがオチだと思うぜ」
征士の鋭い言葉と秀の意外に客観的な意見の前に、その勢いは一気に崩れ去ってしまう。
「いいプレゼントになると思ったんだが・・・」
遼は世にも悲しげに呟いて、祇園精舎の鐘の声が聞こえそうなほど肩を落とした。瞳は哀愁に曇り、眉間は悲壮に寄せられ、背中には暗い影まで漂っている。この状態に陥った彼はある意味無敵だ。
真っ先に降参したのは伸だった。人の心の機微に敏感な彼は基本的に余計なお節介を好まないが、目の前でどん底に落ち込まれるのはもっと苦手だ。
「・・・ま、来るか来ないかは置いといて、一応呼ぶだけ呼んでみる?」
「そうだな、やってみる価値はある。朱天はあれで情に厚いところがあるから、こっちの気持ちが通じれば顔ぐらい出してくれるかもしれん」
当麻が一縷の可能性にかけて、消極的に賛成した。
「おい、そんな無責任な・・・」
征士は口ではたしなめるも、すでに諦めの色が濃厚だ。
「ナスティには絶対内緒だからな。バレたらお説教どころじゃすまねェぞ!」
秀はさすが義の戦士、潔く(?)協力を申し出た。
『赤信号、みんなで渡れば怖くない』 どんな困難でも一旦腹をくくってしまえば、自ずとやる気が沸いてくるものだ。5人の心は今や一つになった。
「・・・ありがとう、みんな」
遼は、文句を言いながらも決して見捨てることはしない仲間たちに心から感謝した。
かくして、ナスティに誕生史上最高のプレゼントを贈るべく、彼らの奮闘が始まったのだった。
闇魔将・悪奴弥守の生活は非常に規則正しい。毎日夜明けとともに床に就き、日没(妖邪界には太陽がないので、この表現は不適当かもしれない)近くに起床する。某幻魔将と違い寝過ごすことは滅多にないし、どこかの毒魔将のように三日連続徹夜した後丸二日間寝倒すということもない。実に前向きかつ健康的なのである。難点があるとすれば、早寝早起きを信条とする鬼魔将や姫君と話す機会が少ないことくらいであろう。
その日もやはり明け方に帰宅し、朝餉(彼にとっては夜食)の準備ができるまで愛犬たちの世話をしていた。
「留守番ご苦労だったな。お前たちは自分で散歩に出てくれるので助かるぞ」
などと話しかけながら、一頭一頭の健康状態を確かめる。細やかな気配りの甲斐あって、犬たちは飼い主に似ず利発と評判だ。
と突然、リーダー犬が低く唸って身構えた。
「どうした?」
反射的に刀をつかんで辺りを見廻す。かすかな気配を視線で辿ると、はたして土塀の陰から見慣れぬ生き物が現れた。
「白炎ではないか!」
悪奴弥守は驚きながらも刀を退いた。主の態度から犬たちも警戒を解く。
動物というのは自分に好意を寄せてくれる相手に弱い。開けっ広げに友好的な態度で向かってこられると、もう無視できなくなる。それは千年の霊虎といえども例外でなかった。
「どうしたのだ? 一人か? 烈火は? まさか家出か?」
白炎は首を振って意思を伝えようとしたが、その努力は実らなかった。
「・・・まあ、たまには一人で旅に出たくなることもあろうな、うん」
悪奴弥守は何をどう解釈したのか、遠い目をして頷く。白炎は人間なら愛想笑いに該当する表情を浮かべて、さりげなく立ち去ろうとした。が、
「! お前、その首輪はどうした?」
闇魔将の両方2.0の視力は見逃してくれなかった。
「自由を愛する獣にこのようなものを嵌めるなど、烈火は何を考えておるのだ?」
憤慨を顕わに首輪に手をかける。白炎は逃げる間もなく首根っこをひっつかまれ身動きを封じられてしまった。
「がうるる〜」
威嚇の声を上げて体を揺する。純粋な親切心からの行為だけに本気で振り払うことができないのがつらい。白銀の毛が幾筋も宙に舞った。
「うぷ、抜け毛がひどいな。人界はもう夏か」
そうこうしているうちにとうとう首輪を外されてしまった。
「よしよし、よう我慢した。さぞ痒かったろう」
悪奴弥守は清清しい笑顔で首輪を掲げ、ごっそり絡まった抜け毛を払った。毛束に混ざって折り畳んだ紙が落ちる。白炎は慌てて拾おうとしたが、悪奴弥守の足に阻まれかなわなかった。彼ははるばる次元を超えて運んできた手紙が無残に踏み潰され、ごみと一緒に捨てられるのを、呆然と眺めた。
夕方、白炎はつややかに整えられた毛並みとは裏腹に、見るも哀れなほど意気消沈して帰ってきた。遼は彼が任務に失敗したことを悟った。
「おかえり。・・・無理を言って悪かったな」
がっかりする一方でどこかふっきれたような気分になる。秀や征士の言う通り、最初から無理があったのかもしれない。
しかし責めるどころか逆に労いの言葉をかけられた白炎は奮い立った。皆を失望させたままおめおめ引き下がるなど、虎よ虎よと謳われた野生の誇りが許さない。
「がう!」
紅い双眸に裂帛の気合を宿し、少年の弱気を叱咤する。
「白炎・・・」
幼い頃から自分を慰め励まし導いてくれた猛獣の心を理解できない遼ではない。数秒のアイコンタクトの後、彼は力強く頷いた。
満月の昼下がり(妖邪界には月しか出ない)、螺呪羅は気を抜けば閉じそうになる眼をこすりながら、よろよろと家路を急いでいた。迂闊と言うか自業自得と言うか、溜め込んだ書類を整理しているうちに職場で夜を明かしてしまったのだ。
幻魔将は通常の政務に加え、人の心の安寧を守るという任務を持つため、莫大な精神力を要求される。その負担がどれほどのものなのか周囲は知る術もない。従って多少頽廃的な暮らしをしていても見逃してもらえる訳だが、彼はそれをいいことにかなり怠惰を貪っていた。当然、根をつめて働くことに慣れておらず、限界を超えて疲労した今の機嫌はすこぶる悪い。
そこへ行き合わせてしまった白炎は、余程の悪運に見舞われていたのかもしれない。
「やけに分厚いな」
首輪に結わえつけられた包みを外しながら、遼は首をかしげた。いくら朱天が几帳面な性格と言っても、ここまでご大層な返事を書くことはないだろうに、と思う。それとも文庫本一冊分に足りるほど深刻な事情があるのだろうか。
皆の様々な忖度が交錯する中、遼は恐る恐る畳紙を開いた。
中身は白紙。いや、よく見るとただの包み紙だ。厳重な封印に不安を募らせつつ、もう一度めくった。
出てきたものはやはり白紙。これも包み紙だ。さらに開くが文字は見当たらない。剥いても剥いても皮ばかり、まるで玉ねぎである。次第にうすら寒い雰囲気が流れ始めた。
「あ・・・、あった・・・!」
百枚ほどもめくっただろうか、やっと中身と思しき最後の一枚が出てきた。今度は確かに筆の痕が見える。
「・・・開けるぞ」
折り目を解くのももどかしく手紙が広げられた。そして、書かれた言葉を目にした瞬間、
「・・・・・・」
誰もが固まった。
白々とした紙の中心にはミミズののたくったような字で、『小さな親切大きなお世話』の一言。
「朱天・・・の字じゃないよな?」
遼が肩を震わせて分かりきったことを聞いた。
「ああ。こんなひねくれた嫌がらせをするのは・・・」
当麻がこめかみに血管を浮かせ、
「覚えてろーッ、螺呪羅ァ!!!」
秀が手紙をずたずたに引き裂いた。
「ホントにこれにするの?」
伸が気の進まない口調で尋ねた。
「ああ。少々乱暴かもしれないが、これなら万一他の奴に見られても大丈夫だろう」
当麻は自信満々で太鼓判を押す。
「奴らの武人魂に賭ける、という訳だな」
征士が腕を組んで相槌を打ち、秀は
「後がコワそうだけどな」
と肩をすくめた。
「いいか、白炎? 今度こそちゃんと朱天本人に渡すんだぞ」
額をくっつけんばかりの遼の懇願に、白い虎は力無く唸って答えた。
タタタタタタ・・・
軽やかな足音が律動的に渡殿を駆け抜け近づいてくる。那唖挫は、反射的に手元の薬を棚の中へと片付けた。
「お邪魔いたしまする」
あいさつと同時に襖が開く。十二単をまとった少女が息を弾ませ、それでも作法だけは律儀に守って敷居の前で三つ指をついた。那唖挫は嫌な予感を確信に変えつつ、とりあえず薬品の隠匿に成功したことに安堵した。
「何か用か、迦遊羅?」
「折り入ってご相談したきことが・・・」
今までの経験に照らし合わせて、こういう場合の「相談」は大概手短に済まない。だからと言って追い返す訳にもいかないので、本人だけが判るように配置された書籍や実験器具の山をどけて部屋に招き入れてやった。
迦遊羅は床の荷物を裳裾で崩さないようにそろそろと進んできて、神妙な手つきで懐から封筒を取り出した。
「実は先ほど、このような文を受け取りまして」
紫紺の裏地つきのかしこまった封筒。那唖挫はとっさに恋文の類を連想し、不埒者を始末する方法を考えた。しかし表書きを読んだ途端、その計画は頓挫する。
「これは・・・」
封筒の表には、お世辞にも達筆とは言えない文字で大きく『果たし状』と書いてあった。
「朱天には見せておらぬのだな?」
宛名を見るなり那唖挫は確認した。
「見せられるわけがないでしょう。白炎からこれを受け取ったとき、私は心臓が止まるかと思いました」
迦遊羅が泣き出しそうな表情で胸を押さえた。那唖挫は傍に膝をつき、頭を撫でてやる。
「どうして今更このような・・・」
迦遊羅の問いに、
「まったくだ。悪ふざけにしても程がある」
那唖挫は不機嫌を顕わにして手紙の表を指で弾いた。
『皐月廿八日、柳生邸にて手合わせを願い奉り候。双方立会いのもと、尋常に勝負されたし』
どこでこんな台詞を覚えてくるのだろう。この労力を別の方面に活かせば、もっと有意義な人生が送れるだろうに、などと年寄り臭いことを考えて、慌てて首を振った。
「相手にするのも腹立たしいが、このまま捨て置いてはあの小童どもを付け上がらせるだけだ。ひとつお灸を据えてやらねば」
宣言するや否や、那唖挫は薬品棚の中をまさぐり始めた。一体どの筋から集めたのか、作業台の上に横文字ラベルのついた怪しげな瓶が次々と並べられ、鮮やかな手際で調合されてゆく。
迦遊羅が我に返った時には、すでにフラスコの中で謎の液体が泡を吹いていた。
待ちに待った返事が届いたのは誕生会当日になってからだった。
「今度こそ大丈夫だろうな?」
厚手の包み紙の中から現代的な封筒が現れる。表には「若武者御一同」という宛名。遼は不審な点がないことを確かめ、さらに征士に鑑定を頼んだ。
「間違いない。この筆跡は朱天のものだろう」
征士は注意深く観察して答えた。一同の興奮が嫌でも高まる。ついに審判の時、果たして勝利の女神は彼らに微笑むのか!?
だが期待をあざ笑うかのように、返事らしきものは入っていなかった。イエス・ノーはおろか、署名すら見当たらない。
「何だよ、こりゃあ?」
何のかんの言って一番楽しみにしていた秀が、明らさまにがっかりする。
「確かに無茶な方法だったとは思うけどねー、これはないんじゃない?」
「断りにしても、何か一言あって然るべきだ」
伸と征士は開き直ったのか、己の失礼を棚に上げて不満をこぼした。
「よっぽど怒ってたってことだろうな・・・」
遼がため息をつくと、白炎が何かを訴えるように小さく鳴いた。
「ああ、お前のせいじゃないよ。気にするな」
次の瞬間、当麻が凄まじい形相で封筒をひったくった。
「みんな、伏せろ!」
叫びながら手裏剣を投げる要領で窓の外に捨てる。
「当麻、」
どかーん
質問の後半は天をも揺るがす爆発音にかき消され、誰の耳にも届くことはなかった。
「・・・・・・」
爆風が去った後には、呆然自失そのものの様子で立ち尽くす5人と1匹。
「・・・えーと?」
しばらくして誰かが発した言葉はほとんど意味不明だったが、全員同じ心境なので充分に通じた。
「遅行反応性のプラスチック爆弾の一種と思われる」
当麻が条件反射のレベルで解説した。割れた窓ガラスが窓枠ごと床に落ちた。
「あ・・・、アっブねーな、朱天のヤロー! 危うく死ぬとこだぞ!!」
秀は恐怖のあまり涙目になって抗議した。
「いや、こんな芸当ができるのはあいつしかいない」
伸が口の端を歪めて拳を握り締める。
「妖邪の科学力、侮りがたし」
征士の反応はいつもにも増してピントがずれていた。
「それより・・・ナスティが帰ってきたら何て言い訳する?」
遼が血の気の失せた顔で全員を振り返った。風光る小田原の山に死に等しい沈黙が流れる。
庭の芝生はすっかり焼け焦げ、木の枝は折れ、ナスティが丹精して育てた花壇は見る影もない。窓は全滅、カーテンはズタボロ、割れたガラスが部屋中に散乱している。周囲に民家がなかったことだけがせめてもの救いだ。
「素直に謝って修理するしかないだろう」
伸が悟り切った口調で唯一無二の選択肢を唱えた。
「だよなあ・・・」
全員がため息をつく。家を壊したことは今までも何度かあったが、今回はシャレにならない。よりによってナスティを一番喜ばせたい日に、こんな最悪の事態を招こうとは。
重い罪悪感と苦い後悔。後始末は無言で始まった。
大学から戻ったナスティは、変わり果てた我が家を前に文字通り凍りついた。平和な日常ではお目にかかれそうもない、いっそ小気味良いまでの惨状である。いくらこの屋敷における破壊行為が日常茶飯事だとは言え、警察や自衛隊が出動しなかったのが不思議なくらいだ。
もっともよく見ると、派手な散らかりようの割に被害は少なく、怪我人も出ていないようだ。
ほっとしたところへ、失敗を取り返そうとけなげに働く少年たちの姿を見てしまったものだからたまらない。生来どこか浮世離れしている彼女は、怒りより感心が先に立ってしまった。
「今度は何をやったの?」
ため息混じりの問いかけに、恐縮しきった5組の視線が注がれた。弁解や言い逃れは一言もなく、ただ悲しげに黙りこくるばかり。普段の彼らからは想像できないしおらしさだ。これでは本当に怒れない。修理にかかる費用を考えると頭が痛いが、済んでしまったことを掘り返しても不毛なだけだ。
「台所は・・・無事ね。夕食作るわ。食べるでしょ?」
いかなる状況でも衣食住は確保する、それがナスティの強さである。本人は自覚しているかどうか謎だが。
5人は感謝すると同時に、彼女には一生頭が上がらないだろうと思った。
時計の針が9時を回る頃、やっと一息つける状態まで片付いた。ベニヤ板で応急処置を施したダイニングでテーブルを囲み、6人と1匹のささやかな誕生パーティが始まった。
少年たちはおめでとうの他にお詫びの言葉も添えて、気恥ずかしそうにプレゼントを手渡す。
「今年の誕生日は一生忘れられそうにないわね」
ナスティの感想に全員が苦笑した。本当はこんな形じゃなく、もっと心から嬉しそうな顔が見たかった。ただ喜ばせてあげたかっただけなのに、世の中とは全くままならない。再び暗澹とした空気が漂いそうになった時、玄関のドアがノックされた。
一瞬何事かと緊張するが、よく考えたら呼び鈴は壊れている。
「はーい」
ナスティが小走りに出て行き、ドアを開けた。
「あら?」
誰もいない。辺りを見回しても人が訪れた気配はない。
あるのは白い組紐で飾られたスズランの花束が一つ。しわだらけになった三通の手紙を添えて。
気になって追いかけてきた5人は、思わず顔を見合わせた。見覚えのある手紙だ。と言うより忘れようがない。
ナスティが便箋を取り出して開く。
「招待状・・・鬼魔将様? こっちは・・・果たし状??」
一番見られたくない人に声を出して読まれてしまい、5人は頭を抱えてその場に座り込んだ。最悪だ。身から出た錆と言われればそれまでだが、何もここまで止めを刺さなくてもよいではないか。
紙をめくる乾いた音がする。5人はいたたまれぬ思いでナスティの言葉を待った。やがて
「もう、何考えてるの、あなたたち・・・」
恨み言に続いて、くすくすという忍び笑いが聞こえた。さすがの姉上もついに切れたかと背筋が寒くなる。恐る恐る開けた目に質の良い和紙が映った。彼らが書いた手紙と一緒に大事そうに握られている。
「あ、それ」
何か言おうとした秀の口を、遼が押さえた。
ナスティは少しためらってから、手紙を差し出した。
「どうぞ。あなたたちに対する返事でもあるから」
途端に我先に殺到する5人。ひしめくように覗き込んだ先には丁寧な楷書で短い文章がしたためられていた。
『ご招待痛み入る。務めがあるゆえ直参かなわぬが、世界の果てよりお祝い申し上げる。誕生日おめでとう』
恐ろしく簡潔で飾り気がなくて温かい祝辞だった。
「は、ははは・・・」
自然に笑いがこみ上げる。もう笑うしかない。最後の土壇場になってこのどんでん返し。じたばたしていた自分たちはまるきり道化ではないか。
色々な感情がごっちゃになって溢れてくるのに、なぜか悔しいとだけは思わなかった。
「みんな、本当にありがとう。大好きよ」
ナスティの頬を涙が伝った。真珠のようなという形容がぴったりのきれいな涙だった。
==========>>【終わり】<<==========
■静流
3日遅れのナスティお誕生企画です。この程度の駄文に時間かかりすぎ(=_=);
しかも気がついたらただのドタバタギャグに・・・なぜなんだー!!
■鏡一
余りの煮詰まりぶりを見かねて、つい手を貸してしまったよ(笑)
お嬢様方には受けないだろうなあ。
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