1988年、日本のとある山奥。
大学で伝奇学を研究しているナスティ・柳生(18)は、5人の助手と共に遺跡の調査に出かけ、不思議な場所に迷い込む。
地図にないその森は行けども行けども果てしなく、丸一日彷徨い続けても一向に出口が見つからない。
秀:「は・・・腹減った・・・・・・」
ナスティ:「こんなことになるなんて・・・本当にごめんなさい」
遼:「ナスティのせいじゃないさ。道は間違ってなかったんだ」
征士:「まさかこの現代に地図に載っていない土地があるなど、誰も思わないからな」
当麻:「ま、これも遺跡調査の醍醐味だと思えばいいさ」
伸:「醍醐味で遭難してたら笑い話にもならないけどね」
秀:「はは、言えてる。ん?」
いつの間にか行く手にそびえ立つ巨大な門。
遼:「こんな所に門がある・・・」
当麻:「近くに人がいるということだ。助かるぞ」
秀:「でも結構ボロくなってるぜ。もう使われてないんじゃ?」
征士:「いずれにせよ行ってみるしかあるまい。このままでは行き倒れだ」
伸:「そうだね。もしかしたら出口かもしれないし」
門をくぐった途端、突如開ける視界。目の前に広がるのは蓮の花が咲き乱れる沼地。その向こうに小高い丘があり、町らしき建物群が見える。
秀:「見ろ、町だ!」
一同、沼地の中の細道を足早に進んでゆく。
征士:「随分古風な建物だな。廃村か何かか?」
伸:「人は住んでるみたいだよ。ほら、煙が上がってる」
当麻:「地図に載っていないくらいだ。隠れ里ってヤツかもしれん」
秀:「んっ、食い物の匂いッ!!」
全員猛烈な勢いでダッシュ。育ち盛りな上、丸一日まともなものを食べていないので、ほとんど条件反射である。
遼:「誰もいない・・・生活の気配はあるのに」
伸:「どうしたんだろう?」
秀:「店はちゃんとやってるみたいだぜ」
通りに軒を連ねる店々は暖簾を出し、戸を開け放っている。
征士:「飲食店ばかり・・・? 妙だな」
ナスティ:「ほんと。普通の商店街とは違うみたいね」
当麻:「これはひょっとすると、テーマパークか何かじゃないか。最近やたらあちこちにオープンしてるだろう」
伸:「ああ、そう言えば。だからこんなレトロな雰囲気なのか」
遼:「でも客も係員もいないなんて・・・嫌な胸騒ぎがする」
秀:「疑問はとりあえずおいといて、飯にしねえ? オレもう腹減って死にそう」
征士:「賛成、と言いたいところだが店の人間がいないのではどうしようも・・・」
伸:「どこかに入って誰か来るのを待つってのは?」
当麻:「それが妥当だな。まだ調査が残ってるし、体力は温存しておいた方がいい」
ナスティ:「みんなは先に行ってて。わたし電話してくる。あと、お金も下ろさなきゃ」
ナスティ、中心地らしき方角に走ってゆく。
5人がしばらく歩いてゆくと、カウンターに料理を盛った大皿を並べた店がある。
秀:「あぁ〜、うまそう・・・。こんなに腹減ってるのにおあずけかよ」
征士:「勝手に食べる訳にはいかん。我慢しろ」
当麻:「待てよ、料金箱にトレイと小皿・・・この店はセルフサービスか!」
伸:「どうしたの、当麻?」
当麻:「セルフサービスなら食券を買えば問題ない!!」
当麻・秀・伸・征士、さっそくカウンターに置いてある箱から食券を買う。
遼:「お、おい、金を払えばいいってものじゃ・・・やめた方が・・・・・・」
口では止めるものの、激しく鳴く腹の虫には勝てない。結局一緒に食べてしまう。
ナスティ:(途方に暮れて)「おかしいわ・・・。電話もキャッシュコーナーもないなんて・・・」
仕方がないので、財布の中身を確かめながら元来た道を戻る。
ナスティ:「4万7千円か・・・いくら秀と当麻が大食いでも足りるわよね・・・?」
不安に駆られつつ5人と別れた場所まで来るが、姿が見当たらない。
ナスティ:「みんなー、どこに行ったのー!?」
と、数軒先の店のカウンターに5つの人影。
ナスティ:「あなたたち、勝手に食べちゃだめじゃない」
慌てて暖簾をめくるが、そこにいたのは・・・
ナスティ:「きゃあぁーっっっ!!!」
ナスティ、余りの出来事によろめいて柱に背中をぶつける。
ナスティ:「な、なな・・・何、どうなってるの!? どういうこと!?」
5人:「ぶひぶひ」
ナスティ:「あなたたち・・・遼、伸、秀、征士、当麻?」
呆然とするナスティを後目に、料理をがっつき続ける5人。すでに理性はない。
ナスティ:「やっぱりこの町は変よ! 帰りましょう」
5人いや、5匹を引っ張って店を出ようとした時、食肉会社のトラックが現れ、中から捕獲網が投げられる。
5匹:「ぶひーん!!」
ナスティ:「ああっ、みんな!!」
トラック、鮮やかな手際で捕獲物を回収し、走り去る。
ナスティ:「だめよ、待って! みんなを返してーっ!!」
ナスティ、走って追いかけるが、追いつけるはずもない。
ナスティ:「はぁ、はぁ・・・見失っちゃった・・・。どうしよう・・・」
へなへなと座り込むナスティ。陽が傾き始める。
ナスティ:「脱力してる場合じゃないわ。暗くなる前にみんなを見つけて帰らなきゃ」
立ち上がりかけるが、何と足が透けて地面が見えている。
ナスティ:「!!」
度重なるショックに、今度こそその場で動けなくなる。
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