打敷について

 今回はお仏壇のお飾り…『打敷』についてお話します。
 「前の打敷が汚れてしまったので、新しいものを買いました」と門徒さんがおっしゃたので、父(住職)が前の物を処分する為に預かってきました。
 『打敷』とは、お仏壇の中に敷く美しい三角形の布のことです。もちろんお寺の内陣でも見ることができます。

 さて、皆さんは『打敷』の謂れをご存知ですか。
 昔々……お釈迦様が説法をなさる時、その場所は道端や木の下等でした。きれいな宮殿で豪華な椅子にふんぞり返っていたわけではないのです。
 そこで、弟子がお釈迦様のお座りになる場所に美しい布や花を敷き、飾り付けたのです。私達がお客様に座布団を用意するのと同じように、
敬愛するお釈迦様への心遣いとでも申しましょうか……そんな意味があったのです。

 『打敷』はお仏壇の大きさに合わせて用意します。仏具屋さんで購入される場合は仏具屋さんにお仏壇の大きさをおっしゃれば、ちょうどよいサイズのものを見さて下さいます。
 また、帯や着物の布で手作りなさる方もいらっしゃるようです。門徒さんの心がこもっていて、素敵すね。

 『打敷』を飾る場所は卓(しょく)といわれる机で、蝋燭立て・花瓶・香炉・香盒が乗っているところです。お仏壇によっては机ではなく段になっているだけの場合もありますが、大きなお仏壇では奥に上卓(うわじょく)手前に前卓(まえじょく)という2つがあり、それぞれに少し違ったお道具が乗っています。
 お仏壇はお寺の内陣を小さくしたものですから、お寺にお参りした時によく見てみるのもよいでしょう。お手継のおてらでもよいですし、別院などは大きくてわかりやすいかもしれません。

 『打敷』は本来、年がら年中掛けっぱなしにするものではありません。
 祥月命日以上の年忌法要・彼岸会・盆会・報恩講・正月・葬儀・四九日・結婚式等のあらたまった場合に用い、普段はお仏壇の引き出しにしまっておいてよいのです。
 模様についてはいろいろ有りますが、葬儀や四九日には白いものを用います。しかし普通のお宅では柄物の『打敷』を裏返して間に合わせることもあるようです。逆に、おめでたい法要の時には朱色や金糸を使った華やかなものを用います。
 また、私達の洋服と同じで『打敷』にも涼しげな夏物があります。ご存知でしたか?正直言って、お参りにうかがって『夏物の打敷』を目にすることは少ないです。

 物をお供えするだけがお世話ではありません。
 何年も敷きっぱなしというのは、私達が洗濯も着替えもしないのと同じことです。
 この門徒さんのように、打敷が汚れたら取り替える…または衣更えをするといった心配りも、大切なことではないでしょうか。

1999年8月