文化郷(むら)とは。一口でいうとすれば芸術・文化の実験の場所であり、発表の場所であると言えます。
 私たちは過去30年もの間、まちづくり、まちおこしなど、地域文化の向上を目指し活動を続けていますが、設立当初は年1〜2回のイベントが中心でした。イベントは確かに目立ち、マスコミにも何度か取り上げられはしましたが所詮一回限りのもので、華やかさはありましたが町づくりという点からいうと、何の効果も無かったと思います。
 その結果、そもそも「この地に礎となるような文化がない」ということに気づき始めました。
 イベントを何度やっても効果がない。そんな反省から12年前に平家琵琶をこの地の文化の礎として根付かせようと、平家琵琶演奏家の鈴木まどかさんの琵琶演奏を行ったのをきっかけに、この地を彼女の実験の場として位置づけ、様々な分野の芸術とのコラボレーションを計画し実践してきました。茶道や華道、舞踏家などとの共演もやってきましたし、最近では写経を行いながらの演奏会などもやっております。
 その結果、徐々にではありましたが、何かが見えてきました。
 それは、文化は礎となる文化の上に成り立つもので、様々な文化は礎となるものの上に花開く、ということでした。
 周りの文化都市と呼ばれる町を見るとそこには基礎となる文化が生き生きと息づいているのが分かります。地域には獅子舞や盆踊りなどの地域文化はありますが、それは国民的文化で、私たちの言う礎となる文化とはいわゆる芸術文化を指します。普遍的な文化であり世界的な文化で我が国で発展した古典を指します。
 私たちは平家琵琶を礎に様々な活動を展開しようと思っておりますが、その時々の演奏家や、美術工芸家、舞台芸術から古典芸能までできる限りの人々と交流を深めながら、実験の場、実践の場としての実績を積み重ねていこうと思っており、そのためには何より地域の人々の理解を深め、その環境を整えていかなければいけないと思っております。