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Such a lovely 詩の愛のことば

§感覚§ アルチュール・ランボー

夏の青い宵に 僕は行くだろう、小径をとおり、
麦の穂につつかれ、こまかな草を踏もうと、
夢想家の僕は、草の夕べの冷気を足に感じ、
風にあらわな顔をまかせたまま。

僕は話すまい、何も考えまい、
しかし無限の愛が魂にこみあげてくるだろう、
そして、僕は行こう、遥かに遠く、ジプシーのように、
自然の中を、女の人と一緒のように幸せに。

§NEVERMORE§ ポール・ヴェルレーヌ

思い出よ、思い出よ、私をどうしたいのか?
秋は、どんよりとした空につぐみを飛ばせていた、
そして太陽は、単調な光りを投げかけていた、
北風が吹きすさぶ、黄ばんだ森の上に。

彼女と私は二人きりで、夢見ながら歩いていた、
風に髪と思いをなびかせて。
急に、私の方に、感動的な眼差しをむけ、
「あなたの最も美しかった日はいつのこと?」
と、彼女の息づく黄金の声。

その甘く、響きのいい声は、天使の爽やかな音色。
つつましい微笑がそれに答え、
私は、敬虔に、その白い手に口付けをした。

−ああ、初花の何とよい香りがすることだろう!
心を魅するささやきのこもった、
愛する人の唇から出る、何という最初の「諾(ウィ)」

§ミラボー橋§ ギョーム・アポリネール

ミラボー橋の下をセーヌ河が流れ
そして私たちの愛も流れる
思い出すべきだろうか?
歓びはいつも苦しみの後にやってきたことを

夜よ 来れ 鐘よ 鳴れ
日々は過ぎ去り 私はとどまる

互いに手を取り合い 向かい合っていよう
その間に、私たちの組んだ腕の橋の下を
あんなにも物憂い永遠の眼差しをたたえた
波がとおりすぎてゆく

夜よ 来れ 鐘よ 鳴れ
日々は過ぎ去り 私はとどまる

日々は過ぎ去り 週もまた過ぎてゆく
過ぎた時も
過ぎ去った愛も戻っては来ない
ミラボー橋の下をセーヌ河が流れる

夜よ 来れ 鐘よ 鳴れ
日々は過ぎ去り 私はとどまる

§庭§ ジャック・プレヴェール
限りなく年を重ねても
言いつくせないだろう
あの永遠のわずかな一瞬
きみが私に口づけをした時のことを
冬の光をあびた朝
パリのモンスリ公園で
パリで
地球の上
星の地球の上で
§第十四の悲歌§ フランシス・ジャム

「恋しいひと」とお前が言った。
−「恋しい人」と私が答えていた。
「雪が降っているわ」とお前が言った。
「雪が降っているね」と私が答えたものだ。

「もっとよ」とお前が言った。
「もっと」と私も答えていた。
「こんなふうに」とお前が言ったものだ。
「こんなふうにね」と私も答えていた。

しばらくたってから、お前は言う「私、あなとを愛していますわ」と。
私だって、「もっと愛している」と。
「美しい夏も終わったのね」とお前は私に言う。
「もう秋だ」と私も答える。

それから私たちの言葉は、もうそんなに同じではなくなっていった。
或る日、とうとうお前は言った「おお あなた、私はどれほどあなたを愛していることでしょう・・・」

(それは広々とした秋の華やかな夕暮れの時だった)
で、私はお前に答えた、「繰返して・・・もう一度・・・」

§私はひとりではない§ ポール・エリュアール

唇に軽やかな果実を
ふくみ
さまざまな無数の花で
飾り
太陽の腕のなかにあって
かがやかしく
慣れしたしんだ小鳥のように
倖せで
雨の滴に
うっとりとして
朝の空より美しい
心つくす女
私は一つの庭の話をし
私は夢見る

しかし今、まさに愛している。

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